頭がしめつけられるように痛い…緊張型頭痛、思いもよらないところに原因が:解決法・対処法
日本人の2割以上がなっているとも言われる緊張型頭痛。しめつけられるような痛み・圧迫されるような痛みが特徴ですが、隠れた原因として見過ごされがちなことがあります。
歯医者さんやカイロプラクティックの先生たちだけが気がついているこの原因。それは、あご(顎)や歯の不調です。
あごや歯が頭痛と関係している――いったいどういうことでしょうか。
しめつけられるような頭の痛み
緊張型頭痛の症状は「しめつけるような痛み」と表現されます。頭をギューッとしめつけられるような感覚に苦しんでいる人は意外にも多く、日本人の8割が生涯に一度はこの頭痛になるとも言われています。*1
この頭痛の原因として多くの指摘があるのが、あご(顎)の関節や歯との関連です。
歯やあごの専門家である歯医者さんやカイロプラクターらが、このことにいち早く気がついています。歯やあごの不調に対処しただけで緊張型頭痛がすっかりよくなるという方もけっこういるようです。
口を開けると、あごがバキッと鳴る
では歯やあごにどんな不調が起きるのでしょうか?わかりやすいのはあごの不調です。
あごに負担がかかりすぎると、痛みを感じたり口を開けにくくなります。これは緊張を強いられる状況や精神的なストレスとも関係しています。
たとえば、こんな状況を想像してください。
――職場では、自分の席のすぐ真横に上司の席があります。一日の大半は上司と一緒です。
彼は非常に攻撃的で、なにかあるとすぐにマウントをとります。パワハラすれすれの言動もめずらしくはありません。
自分の左がわ数メートルのところに、こちら向きで座っています。
見た目は海兵隊の軍曹といった感じの角刈りで、そのまま戦争映画に出演できそうです。
――筆者がかつて遭遇した状況なのですが――これはけっこう精神にきます。見張られているようで、つねに気が抜けません。
気がつけばいつも私は奥歯を噛みしめていました。あごに力が入っていたのです。
「肩の力を抜け」ともよく言われましたが、じつは肩だけでなく顎(あご)にも力が入っていたのです。
肩に力が入っているのは、はたから見てもわかるかも知れません。ですが、さすがにあごに力が入っているかどうかまではわかりません。「肩の力を抜け」とは言っても「あごの力を抜け」とは言いませんよね?
ですが、じつはあごの力を抜くことこそ大切なのです。緊張しているとき、私は気がつけばいつも歯を食いしばっていました。
そのことに気づいたのは、あるとき口を開けるときに違和感を感じたからです。じつはそれまでに“顎関節症”(がくかんせつしょう)の症状が何度も出たことがあったので、すぐにわかりました。口が開けにくく、開けると痛みを感じるのです。
ひどくなってくると、朝起きてあくびをした瞬間、バキッとあごのつけ根から音がすることもあります。また食事のときポキッ、ポキッという音がしたりします。耳の下の、あごの関節あたりからです。
そんなときは決まって、歯を噛みしめています。人というのはどうやら緊張すると奥歯に力が入ってしまうようです。どうしても無意識にそうなってしまうのです。
歯の食いしばりは自分でも気づけます。振りかえってみて、奥歯に力が入っていればそれは緊張している証拠です。歯を浮かせてみましょう。フッと気がラクになるはずです。
もうひとつ大事なことがあります。自分が歯をかみしめていないか確認し、食いしばっていなかったとしても実はそれで安心ではありません。
気がつくと上下の歯がくっついていないか?
ふだん意識しませんが、なにもしていないとき、私たちの歯はどのような状態が正常でしょうか?
上の歯と下の歯はくっついているのが正常でしょうか?それとも、離れているでしょうか。
ふつう、なんでもないとき私たちの歯は適度なすき間を保っています。上下の歯が接触している時間は、一日のうち20分もありません。
ところがこれが日常的に上下の歯が触れあっている状態になると問題です。歯は軽く触れているだけでもあごへの負担になるからです。
このように歯のくっつきが習慣化している状態はTCHと呼ばれています。歯(Tooth)が、触れている(Contacting)のが、くせ・習慣(Habit)になってしまっている状態、ということです。
では上下の歯が触れあってしまうのは、どんな時なのでしょう?
まず歯が一番接触しやすいのはパソコンの作業をしているときです。私たちは何かに集中しているときに歯がくっつきやすい傾向があります。
そしてもう一つ、私たちが歯を接触させてしまいやすいのがストレスを感じる場面です。
たとえば洗濯など家事をしている場面でも、本人がそれをストレスだと感じていれば歯を接触させてしまいます。
肩こり、首こりから頭痛へ
ちなみにこの上下の歯を触れさせてしまう癖(TCH)は、歯やアゴのまわりを通じてさまざまな病気の原因になっています。
主なものをあげると歯の知覚過敏や歯周病のほか肩や首のコリの原因になったり、頭痛の原因になることもあります。
またこの癖をもっている人は顎関節症(がくかんせつしょう)の予備軍です。それも、高い確率で顎関節症に移っていくと言われています。
多くの専門家は、「緊張型頭痛」についても歯の接触や顎関節症と関係していると考えています。
緊張型頭痛は片頭痛とちがって、しめつけられるような痛みが特徴です。片頭痛のばあいは、動いたときに痛みがある、光を見るのがつらい、などの特徴があります。
ですが緊張型頭痛と片頭痛の混合型・中間型という場合もあり、いちがいに症状を定式化できるものでもないのが実情です。
なぜ頭痛とあごの関節や歯が触れていることが関係するのか不思議に思われるかもしれません。ですが、あごと頭痛とは密接に関わっています。
ある専門家によると、顎関節症の人はあごのまわりの筋肉がこわばっていることが多く、特に頭の両側にあるこめかみの当たり(側頭筋)が緊張しすぎると、しめつけられるような痛みが生じます。
また顎(あご)は首の頸椎(けいつい)、さらにそこから肩や後頭部ともつながっています。ですから、そこから頭痛になるケースもあります。(日本製顎協会理事・藤原邦康先生による*2)
頭痛でお悩みのかたは、もしかすると歯の接触を改善するだけで頭痛が治る・改善する可能性があります。お試しください。
ちなみに緊張型頭痛と歯の接触(TCH)との関係について、歯科医師の石幡一樹氏がブログで指摘しています(2019/04/03)。
石幡氏のブログのリンク↓
ふつう緊張型頭痛の原因を本やネットでいくら調べても、食いしばりや上下の歯を接触させる癖(くせ)と関係があるという説明はなかなか出てきません。
これについて石幡医師は、(頭痛の専門家であっても)TCHという概念じたいを知らない可能性があるとまで言っています。
そもそも「上下の歯が当たっているだけで問題だ」ということ(TCH)をわかっている先生がいないのであれば、いくら病院にかかったところであご(顎)や歯のことと結びつくはずもありません。
逆に歯科医の先生やカイロプラクティックといった顎関節の専門家の話を聞いてみると、頭痛と歯・あごの関係をうかがわせるような例はこと欠きません。
そもそも歯やあごが痛いからといって頭痛外来や心療内科に行く人は、まずいません。内科や心療内科の先生はあごや歯の診察はしないので、気づきようがありません。
ですが歯やあごの専門家のところにはそういう患者さんがわんさか来ます。だから歯医者さんは実感として顎関節症やTCHの患者さんのなかに「頭痛持ちの患者さんが多いな」という実感をお持ちのかたが多いのです。
じっさい、顎関節症かどうかのチェック項目の中には「頭痛や肩こりがよくする」という項目が含まれています。
このへんが頭痛の専門家と歯やあごの専門家のちがいになろうかと思います。
ですからいくら頭痛外来などで解決しなかった頭痛が、歯医者さんやカイロプラクティックに行ったら治った、ということも出てくるのです。
これは「歯医者さん・カイロプラクターさんに一本」と言えるかもしれません。
歯の接触ぐせを治すには
では、“歯の接触ぐせ”はどうすれば治すことができるでしょう?
TCHの概念の提唱者である木野孔司氏(歯科医師)は、張り紙を見るだけで改善できる、と言います。
たとえば「歯を離す」「歯を離して力を抜く」などと書いた紙を目につく所に10ヵ所以上、貼っておきます。(ふせん等でOK)
すると無意識に歯をくっつけてしまっていても、ふせんを見るたびに自分で気づくことができます。そこで歯を離すことができます。
注意したいのは、歯を離すことを意識しすぎないこと。意識しすぎてかえってストレスになってしまうことがあります。
もうひとつ、おすすめしたい方法があります。それはやはり「力を抜く」「リラックス」などと書いた紙をそこら中に貼っておくことです。
パソコンの作業をしていたり、スマホを見たりしているときはどうしても歯だけではなく口のまわりや首、肩のあたりまで力が入りがちです。
ふと気づいたら体の力をすべて抜いてあげる。これはあごや歯に限らず、心身すべてをいたわることにつながっていくでしょう。
歯と歯が触れあっていないか。口のまわりや首のほか、全身に力が入っていないか。
こういったことをちょっと意識するだけでも心身の負担やストレスを和らげることができるでしょう。また、自分がストレスを受けているかどうかのわかりやすいサインにもなるのです。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません