子供の咳(せき)が止まらない!声が出ない!せきを止める方法は〇〇を刺激すること(クループの対処法)
もし今、子どものせきがひどく止まらないのなら、医療機関を受診する必要があります。ですが病院に着くまでに時間がかかります。それまでのあいだ少しでも咳をラクにしてあげる方法はないのでしょうか?
答えは意外にかんたんです。病院に行けばいいのです。ヘンな話ですが、軽度なものなら診察を受けるまでにかなりせきは収まります。
いったいどういうことでしょうか?
筆者もよく子どもの咳(せき)が止まらなくなり、声が出せなくなってよく夜間外来に連れて行きました(クループの状態)。
その経験上、咳を止める・緩和するのに効果があったと思われる方法とその理由をご紹介します。
《クループとは》
咳が止まらなくなり、声が出なくなりオットセイの鳴き声のように「オウッ、オウッ」というようなせきが出始めることがあります。こういった症状は「クループ」と呼ばれ、危険視されています。
子どもの咳(せき)が止まらない!咳を止めるには
① 肩をぐるぐるまわす
両腕をぐるぐる回します。
やり方は「背広やジャケットを脱ぐ」「ランドセルを下ろす」ときのような感じです。
ポイントは肩甲骨(けんこうこつ)を回すことです。うまくいくと肩がゴリゴリと言うのが自分でわかります。背泳ぎの動きを両手を同時にやるような感じです。うでだけが回らないように気をつけます。
↓下記リンクに同様の体操が紹介されており、参考になります
緊張型頭痛の自己対策 予防にもなる頭痛体操と生活習慣の改善 | NHK健康チャンネル
2019/07/24 23:11
目的は“交感神経”を刺激することです。じつは咳と自律神経のはたらきは関係しています。
《交感神経って、なんだっけ?》
私たちは日々、呼吸し、食べたものをお腹の中で消化しています。心臓は常に動いていますし、気がつけばおしっこがたまっています。寒くなれば鳥肌が立ち、緊張すれば口の中はカラカラになります。寝ている間もからだは動いています。自分の意志でコントロールするのは不可能です。
このように勝手に自分で動いているからだの動きを制御しているのが自律神経です。
自律神経には2種類あります。ひとつは日中のアクティブな活動をつかさどる神経、もうひとつはリラックスしたり体を休めるときに働く神経です。
アクティブな活動のアクセル役になっているのが交感神経です。反対に活動にブレーキをかけ、からだを休ませるのが副交感神経です。
私たちのからだは、この交感神経と副交感神経のどちらかが優位になったり下位になったりとまるでシーソーのように変化して成り立っています。
副交感神経は気道をせまくし、交感神経は気道を広げる方向にはたらきます。気道というのは空気の通り道ですから交感神経を優位にはたらかせれば、呼吸がしやすくなります。
寝るときというのはリラックスし、からだを休ませる方向に体はむかっています。副交感神経が優勢になっているのです。そのため、体を休ませる代わりに気道を狭め、せきや喘息(ぜんそく)が起きやすくなります。
肩甲骨を回すことで、この交感神経を刺激することができます。その結果、気道がひろがって呼吸がしやすくなるというわけです。
もともとは頭痛を治すための体操で、頭痛外来の専門医らもこぞって推奨しているものなのですが咳にも効くようです。
ある程度まわしたら、次は逆方向に回してもかまいません。肩甲骨のまわりをゴリゴリと刺激することが大事です。やはり「ジャケットを着る」「ランドセルを背負う」感じで回しましょう。
速くやる必要はありません。ゆっくりと肩甲骨の周りを刺激してあげましょう。
② 両腕を後ろで組み、上に引き上げる
やはりこれも交感神経を刺激するのが目的です。左右の肩甲骨を寄せます。
両手の背中のうしろで合わせます。そして薬指・小指を組みます。手のひらを上にむけて両腕を引き上げ、顔は前に向けます。
〈参考動画〉
これは最近、花粉症対策でよくメディアに出演している東京厚生年金病院の石井正則医師がすすめている鼻づまりの解消法です。
石井医師によれば、この体操は「医療の現場ではよく知られた裏ワザ」だそうです。やはり交感神経を刺激することで鼻づまりを緩和します。(鼻の粘膜の血管を収縮させる)
交感神経がつながっているのは、なにも鼻の血管だけではありません。咳を鎮める効果もあるのではないかと思い、子供にやらせてみるとやはり一定の効果がありました。
③ わきにペットボトルを挟む
子どもが一番やりやすい方法です。
これもやはり花粉症対策の一環で石井医師が考案したやり方です。わきの下の交感神経に働きかけます。
正確に言えば、ペットボトルをはさむとその反対側の交感神経が刺激されます。
わきにペットボトルをはさませてみたら、それまで出ていた咳はしずまり静かに寝息を立てて寝ていたので効果はあったのでしょう。
また、このやり方は長い時間続けても負担が少ないようです。細めのペットボトルが見つかればはさみやすく、ベストです。
何もなければ、手でわきの下を押して(圧迫して)あげてもいいと思います。
④病院に行く準備をする
これも一見ふしぎに見えますが、理屈はこれまでと同じです。交感神経を刺激します。
交感神経とは一言でいえば「人間が活動をするための神経」です。起き上がって着がえをして、「今から活動する!」という体勢を作ります。
「これから車に乗って出かけて行くんだ。救急外来に行って看護師さんやお医者さんたちに会って診察してもらって治療も受けるのか」――そう考えれば子供だってそれまで寝ていたカラダもなんとなくシャキッとして目が覚めるでしょう。
リラックスモードから活動モード・戦闘モードに切りかえるのです。そのうちに気がつけば咳は収まっています。
わが家ではクループの状態でたびたび夜間外来に駆け込んでいましたが、診察室に入るころには毎回必ず咳が収まっているのです。先生にどれだけひどい咳なのか分かってほしいのに、いざ自分たちの番が回ってくるとまったく咳が出ない。
おかしいなぁと思っていたのは、実はまったく不思議なことではないのです。子供はそこに行くまでにちゃんと緊張モード(交感神経)にからだを切りかえていた、というわけです。
ですから妙な話ですが病院に行くと、診察を受ける前にほとんど咳がおさまってしまうんですね。交感神経がオンになって気管支・気道が落ち着いた、と考えることができます。
ですから、実際に病院まで行かなくても、準備をしたり車に乗っているだけでも咳が落ち着いてくることがあります。こういった形で乗り切ったこともあります。
これは思い返してみると、大人であっても心あたりがあります。なぜか病院で血圧を測ったときだけ高い数値が出るけど、家で測るとなんでもないということがあります。
いわゆる「白衣高血圧」というもので、やはり交感神経がたかぶったために血圧が上がる現象です。やはり病院という所は交感神経がたかぶりやすい場所のようです。
なんで寝入りばなに急にせきが出始める?
ところで私の家のばあいは子供が咳をしはじめ声が出なくなるのはどういうわけかいつも決まって寝入りばなの22時ごろでした。
不思議といつも同じ時間にクループの状態になるのには、じつはわけがあります。
1.寝ると副交感神経がはたらくから
一つ目の理由は自律神経が変化するリズムです。人間の体には、ふつう夜になると交感神経のはたらきが下がり、逆に副交感神経のはたらきが優勢になるというリズムが備わっています。
世の中のうごきをみてもわかるように、昼間は仕事をし、夜はお家に帰ってゆっくり過ごすというライフスタイルが一般的です。交感神経と副交感神経のバランスが、昼に活動し夜休むという毎日のリズムを生みだしているからです。
また人を眠りにいざなうメラトニンというホルモンがあります。このホルモンは副交感神経を優位にする働きがあります。
副交感神経は気道をせばめるはたらきがあります。ですから交感神経のはたらきが落ちてくるのとあいまって夜になると咳が出やすくなります。
2.咳をおさえるホルモンが減る
もうひとつの理由はホルモンのリズムです。
ふつうは生活していても全く気づきませんが、私たちの体のなかではふだんから炎症をおさえる物質が放出されています。ステロイドホルモンといいます。
皮膚炎を抑えるステロイド剤というのを聞いたことがあるでしょうか。これと本質的に同じもので、からだの中の炎症を抑えるはたらきをします。
じつはこのステロイドホルモンには一日の中でもたくさん出たり出なかったりというリズムがあり、夜間はあまり出なくなります。
気管支喘息(ぜんそく)もせきも炎症の一つですので、ステロイドホルモンによって日中は抑えられています。夜はこの抑えが外れるのでいっきにせきが出やすく、呼吸が苦しくなりやすいのです。
ステロイドホルモンは早朝にも減少し、やはりせきやぜんそくの原因になっていると考えられています。(日本呼吸器学会 Q&A Q12「夜間や早朝に呼吸が苦しくなります」)
このように、病院に行くまでのあいだにできる対処法をいくつかご紹介しました。すべて交感神経にはたらきかけることで、気道・気管支を拡げ呼吸をしやすくすることをねらいとしたものです。
筆者の経験を基にしたものです。すべての方に効果があることを保証するものではありません。あくまで軽症のケースを想定したものです。
喘息(ぜんそく)は命にかかわることもある危険な症状です。早めに医療機関を受診しましょう。
ですが、今日ここで紹介していることは全てやるのはタダです。完全に咳を止めるところまではいかなくとも症状を緩和する可能性はあります。受診するまでに落ち着いてくれればもうけものです。そのぐらいの感覚で試して頂けたらと思います。
皆さんの咳がよくなることを、お祈りしています。
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