「美人かどうかは結婚できるかどうかに関係ない」はほんとうか

生き方

 美人は得か

テレビのCMに人気の女優さんが出演しているのを見て「この女優さんきれいだよねぇ…」とよくぼやいている女性がいる。いわゆる「美人」を見るたびにうらやましく思うらしい。

 

ほんとうに、美人はそんなに得なのだろうか。

 

少し前、テレビに出ていたマーケティングやトレンドに詳しいという女性コメンテーターが興味深いことを言っていた。ある調査によると「女性の容姿は結婚できるかできないかと関係ない」というのだ。

結婚相談所のデータをもとに行われた調査の結果だという。

 

私はこれを聞いて、「ああそうなのか、結婚できるかどうかと美人ということは関係ないんだ、」と素直に受け取ってしまった。ネット上の反応など見ても、同じように考えた人もけっこういるようだ。

 

それで今回、確認のために情報源を探してみた。するとそれらしい調査報告が見つかった。

 (↓)

学歴・収入・容姿が成婚と配偶者選択行動に与える影響:結婚相談サービスに内包されたメカニズム

(理論と方法33巻2号 2018年 数理社会学会)

 

偶然ではあるけれども、自分の専門領域に近い分野の研究報告だったので論文を開いてみた。

 

すると、おもしろいことがわかった。

 

――ざんねんではあるけれども、この話にはじつは「ウラ」がある。事実というのは、ときにほんとうに奇妙である。

 

容姿」といってもいろいろある

「容姿がいい」からといって、結婚しやすいとは限らないというのは確かに事実だった。

 

ただそれは、婚活サービスの中での話だ。

 

「これまで結婚といえばお見合いとか恋愛を通じてするのがメインだったけど、最近は結婚相談所を利用して結婚する人も増えてきた。婚活サービスを使って結婚する人たちは、結婚相手の選び方にも特徴があるんじゃないかな?」

 

そんなふうに考えたある社会学者たちが、婚活サービスを行っている会社が持っているデータを使って調べてみた。

 

すると、婚活市場では結婚するにあたって「男性は女性の容姿をそれほど気にしていない」ことがわかったという。

 

つまりこれは結婚一般についてのはなしではない。あくまで結婚相談サービスに登録した人たちの話であってそれ以外の恋愛結婚とかお見合い結婚とかのばあいはその限りではないということだ。

 

しかも。

 

話はそれだけではない。

 

この調査で男性・女性の「容姿」といっているのは実はなんとBMIだけ。美人かどうかなんて全く調査には関係ないのだ。「容姿」として考慮されているのは肥満の度合いだけだった。

 

〈BMIとは〉

BMIは、その人の身長に対しての体重がちょうどいいかどうかの参考になる数字です。

たとえば自分の適正体重をかんたんに知ることができます。

自分の身長をメートルに直します。たとえば160cmだったら1.6(m)です。この数字を2回かけて、さらに22をかけます

(例:1.6×1.6×22=およそ56 つまり56㎏ぐらいが標準的な体重ということになります)

 

テレビのコメンテーターがなんの調査を見たかはわからなかったが、もしこの調査のことをコメントしたとすれば、誤解した視聴者もけっこういただろう。

 

ところで、この調査結果の一番面白いところはじつはもっと別なところにある。

 

 

「美人に独身女性が多い」は本当?

 

研究者たちははじめ、「よりやせている方が結婚できるのではないか」という予想を立てていた。

 

ところが調べてみると実態はむしろ逆で、結婚相談所に来る人のばあい、BMIが高い人の方が結婚に至りやすく、逆にやせている女性はそのことによって成婚にいたる可能性を低くしている

 

言いかえれば婚活市場では「太めの女性が結婚しやすい」ということでもある。逆にスリムな女性はそれだけで結婚しにくい傾向にあるという。

 

ただ、スリムな人も悲観する必要はない。結婚相談所で男性からアプローチを受けやすいのは、やせている人だった。

 

まずは異性からのアプローチがなければ始まらないというのは、結婚相談所であっても事情はかわらない。登録した男性たちは女性たちのプロフィールを見て食事に誘う。このとき肥満度の低い女性(つまりやせている女性)の方がたくさんの申し込みを受けるという傾向がある。

  

だから、いちがいにスリムな人が不利だとも言えない。スリムな人は「間口」が広いのだ。

 

 大学院卒女性の意外な結婚事情

こういったことに加えて、大学院を卒業した女性についても興味深い結果が出ている。

 

大学院卒の女性は、それ以外の大卒・高校卒などの女性にくらべて男性からのアプローチを受けづらい傾向にある。

 

男はプライドが高く(おそらく女性が思っているよりずっと)傷つきやすい生き物だから、婚活市場でこういうことが起こるのもよくわかる。

 

ところがこれとは反対に、結婚しやすいかどうかという話になると大学院卒という要素は無関係になるという。院卒だろうが、高校卒だろうが、食事した相手と結婚するかしないかにはそれほど影響していない。

 

男性から見て気になる女性がいたとして、その人が大学院卒だとわかってしまうと声をかけづらい(それなら、そんな男性の気持ちをくじくような情報は知らせなければよいと思うのだが)。でも、一度会ってお互いのことを知れば、相手がリケジョだろうとなんだろうと関係なく、女性としてどうかを男性は見る、というではないだろうか。

 

見た目はやはり重要な要素だった… しかし――

 研究者たちは、スタイルのいい人は「えり好み」をしすぎるがためになかなか結婚にいたりにくいのだろう、という分析もしている。

 

「えり好み」しているかどうか別にしても、男性でも女性でも、やせている人の方がデートの誘いになかなかのらないというのは事実のようだ。誘いを受けるのも多いが、断るのも多いということだ。

 

だから、やせている女性はそうでない女性よりもどんどん男性と会えばいいということになりそうだ。やせている女性は、それだけで誘われる可能性が高いのだから。

 

ただ、こと結婚相談所にあっては肥満傾向の女性の方が結婚していくというのも事実だ。なんだかすこし勇気がもらえる話ではないだろうか。

 

 「あの女優はやせてきれいで羨ましい」と言いたくなる気持ちはわかる。ただ、同時に自分たちが持っている本当の魅力に、女性たちは気がついてないように見える。

 

本当の魅力は、男には伝わるものだ。

 

 


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Posted by metalLeopard