ギトギトのラーメンも家にある調味料ですっきり食べられる~油っこいものを食べやすくするコツ~
カップ麺や即席麺を食べるとおなかがゆるくなる
もしくは、とんこつラーメンなどのこってり・ドロドロ系のラーメンを食べるとなぜかかならず調子が悪くなる…そんな経験、ありませんか?
筆者はかつて、これらのラーメンを食べると必ず翌日にはお腹をこわすということをくり返していました。
ですが、それはもう過去のこととなりました
あるものをピューッとかけて食べるとぜんぜん平気になるということがわかったからです
それはどこの家庭にもある調味料ーーお酢です
〈なぜ即席めんはあんなにギトギトしている?〉
即席めんを食べてお腹をこわしたり、胃にもたれすることがあるのはなぜでしょうか?
一番の原因として考えられるのは油(脂)の量と質です。
即席めんは油で揚げて作られています。そのために麺の中にけっこうな量の揚げ油がしみ込んでいます。
どのくらいの油が使われているのでしょうか?
たとえば、袋めんの裏を見てみるとふつうインスタント麺一食に含まれる脂質の量は16~17g。少なくとも大さじ一杯以上のあげ油が一食分の麺の中にしみこんでいる計算です。
じっさいに料理をするときのことを考えるとどうでしょうか。大さじ一杯を超える量の油というのはけっこうな量ではないでしょうか。しかもそれがみんなで食べる料理に使うのでなく一人分の一回の食事に対しての大さじ1杯以上ということです
しかも即席めんを揚げている油はサラダ油でも天ぷら油でもありません。くわしい説明は省きますがパーム油やラードなどが主に使用されています。パーム油はもともと石けんなどの材料です。ラードは豚の油です。
こういったものを使っている食品というのは、私が思いつく限りではカップ麺などインスタント麺と、カレールー、シチューのルーぐらいのものです。
そしてどれもふしぎと食べるとお腹をこわすものばかりです。
パーム油がお腹をこわす原因になる、なんていう話は聞いたこともないし科学的な根拠も聞いたことはありません。
ですからここで断定することはできません。しかし、いずれにしてもカップ麺や袋麺を食べるとお腹がもたれる第一の理由は油にあるのではないかという仮説のもと、筆者はさまざまな努力をしてきました。
麺をゆでるお湯とスープのお湯を別々にしたり、ゆで上がった麺はザルにあげてできるだけ油をきるとか。
ところが何をどうがんばっても食べた後はお腹をこわしていました。
そして最後にはあきらめて、即席めんを買うのをやめました。
あるとき、ノンフライめんなら食べてもお腹をこわさないことに気づき、それ以降はノンフライめんを買って食べていました。
ですがその一方で一抹のさびしさを感じていたことも事実でした。
(・・・もう自分はなつかしい「あのラーメン」も、「あのラーメン」も食べられないのかな、もし食べるとしたら苦しい思いをするのを覚悟で食べなくてはならないのだろうか?)
(あぁ小さいころよく作ってもらって食べていた、あのラーメンがまた食ってみたい。でも苦しい思いをするのはもう嫌だ…)
そんな思いがめぐりました。
そんなあるときでした。問題が一気に解決したのは。
〈「レモンをかけるとさっぱり食べられるよ」〉
それは、あるテレビ番組をみていたときでした。
瀬戸内海に面したある地域は、レモンの生産量・日本一をほこっています。レモン農家はあらゆる料理にレモンを使っており、みそ汁やサラダなど、とにかく何にでもいれます。レモンはカラダに非常にいいらしいのです(なにがどういいかは忘れました)
ところでこの健康番組に一瞬だけ出てきた男性がこんなことを言ったのです。
「レモンの汁はラーメンにかけてもさっぱり食べられて美味しいよ」
インスタント麺で毎回お腹をこわしていた私にとって、これは聞き捨てならない一言でした。
(・・・これだ!!!)
さっそく試すことを思い立った私でしたが、ふと次のような考えが浮かびました。
(・・・待てよ、レモンの汁はすぐには家にないけど、同じように酸っぱいもので酢なら家にあるよなぁ・・・。これだったらすぐに試せる)
私はそう直感し、まず酢で試してみることにしました。
スーパーで買ってきたのはもちろんノンフライではなく「サッポロ一番 みそラーメン」(商品名を言ってしまいましたが)。食うたびにお腹がもたれていた、でもなぜかどうしてもまた食べたくなる商品です。
じつにノンフライ以外を買うのは数年ぶりです。
作り方はふつう通り。スープをわざわざ別に作るなんてことはしません。
出来あがったラーメンに、ピューッとお酢をひと回しまわしかけ、おそるおそる一口すすりました。
するとどうでしょうか?!
これまでのラーメンのしつこさはどこへやら。
飲み口が妙にすっきりしています。
さらに食べ進んでも平気です。いつもだったら胃のあたりがだんだん重くなって(もう食いたくねぇな・・・)となっていくはずが、今日はどこまで食べてもすっきりとした口当たりです。
気がつけばぺろりと平らげ、スープまでほとんど飲みほしていました。
食べた後の丼ぶりにもどこに油がついているのかわからないほどです。
そしてその後お腹がもたれたり、ゆるくなったりということもありませんでした。
ギトギトのインスタント麺を、この日わたしは克服しました。
〈なぜ酢でさっぱりと食べられたのか?〉
ですが、酢を入れただけでどうしてこんなにも劇的な効果が得られたのでしょうか?
一つ考えられるのは「酢が油のつぶを細かくしてくれている」ということです。
ややこしいので化学式などは省きますが、酢には水と油の間をとりもって混ざりやすくする作用があります。
よく、仲の悪いもの同士のことを「○○と●●は水と油だ」などと言うように、ほんらい水と油はまじり合いません。ところがそこにある特別な材料を入れるとそれが仲立ちになって混じりやすくなったり、完全に混じり合ってドロドロに混然一体となったりします
身近な例はマヨネーズです。
マヨネーズの主な成分は植物油とお酢です。酢はほとんどが水ですから、どちらかといえば水のなかまです。そのために酢と油とはもともと混じりにくいはずです。
ところがそこに卵の黄身を入れて混ぜることでドロドロのマヨネーズになります。完全に溶けあっているわけではないので透明にはなりません。ですがナノレベルまで細かく混じり合っているので時間がたっても分離しません。
これは卵に含まれている脂質(レシチン)などの成分が、水と仲よくできると同時に油とも仲よくできる性格を持っているからです。
まったく気が合わないもの同士の間を第三者が仲介してまったく新しいハーモニーが生まれるのというのは、まるで人間社会をみているようでもあります。
じつはこの水と油どちらとも仲よくできるという性質を、わずかですが酢も持っています。一緒にすると反発しあうだけだった二人の間に、お酢が入ることによってその関係性が変わるのです。
インスタントラーメンでも同じことが起こったと考えることができます。スープとギトギト油のあいだに酢が入ることによってそれぞれが混じり合いやすくなったのです。
これによって脂肪の消化・吸収がスムーズになっている、と考えられるのです。
※ただし原因が、この水と油の仲をとりもつ作用だけのせいかと言えば、そう言い切ることもできません。
なぜなら、先ほど例にあげたようにたまごの黄身にも水と油を結びつける作用がありますが、いくらラーメンにとろりとした半熟たまごや煮卵をいっしょに食べても脂っこさはあまり軽減されません。また卵をいっしょに食べても食後の腹痛が改善されることはありませんでした。
なぜ、酢ですっきりするのに卵ではすっきりしないのか?たまごはリン脂質、酢は酢酸というまったく性質のちがう成分なのでそこに原因があるだろうことは想像できるのですが、その先のメカニズムについては依然としてなぞのままです
〈レモン汁も抜群の効果を発揮する〉
さて、酢での成功に味をしめた私はさらにスーパーでレモン果汁の小瓶を買ってきました。そして今度こそレモン汁を同じく「サッポロ一番・・・」にかけて食べてみました。
結果は・・・やはり成功でした。
効果は酢を入れたときと同様で、油のしつこさは劇的に軽減されて、また食べた後におなかをこわすことはありませんでした。
レモン汁のいいところは酢ほど味に干渉しないところです。正直いってラーメンに酢を入れると、量によってはかなり味に影響します。酸っぱくなるのはもちろんですが、酢を直接入れると香りが強すぎて風味がどこかへ行ってしまうことになりかねません。
この辺りは好みの問題もあると思いますが、この点レモンは優れています。酸味がききすぎないかわりに爽やかな柑橘系の香りが広がり酢のような「キツさ」がありません。
それでいて食感や食後のしつこさを見事に軽減してくれる、魔法のような調味料と言っていいのではないでしょうか。欧米の人々がドレッシングにレモンを使うのにもうなづけます。料理にあれだけドバドバとオリーブオイルをぶっかけても平気なのにはわけがあるようです。
じつはレモン汁にも、卵やお酢と同じように水と油の仲を取りもつ性質があります。
これはドレッシングを手作りしてみると実感することができます。
酢とオイルだけまぜるといまひとつ分離しがちで「なんかうまく合わさらないなぁ・・・」という感じです。ところがレモン汁を加えるといっきに一体感がましてドレッシングらしくなります。私もやったことがありますが、ドレッシングを作るときにミソはレモン汁だということを身にしみて感じました。
じっさい、さまざまなドレッシングのレシピを見てみるととかなりの割合でレモン汁を使っていますし、オランデーズソースのようにバターと酢を乳化させるのに使っている例もあります。
こうして振り返ってみると、レモンが乳化をうながしている例というのはけっこう思い当たります。鮭のムニエルを作ったときもそうです。ムニエルもたくさんバターを使いますが、レモン汁を入れると両者が一体となり不思議なほど見事に一つのソースになってしまいます。
人によって、場合によってはレモンの汁のことを「酢」と呼ぶ人もあります
〈じつは世界中で活用されている酢・レモン〉
ところで筆者はかつて和食料理店の厨房で働いたこともあります。その際に天ぷらや唐揚げ、フライには必ずレモンを添えていました。また焼き物(焼き魚のたぐい)にも必ずレモンを添えることになっていました。
ーー今にして思えば、これらはすべて油っこい食べ物でした。
新鮮で脂の載ったさんまやホッケといった魚は焼いて食べるとは最高に美味く、ご飯もお酒もすすみます。ですが人によっては食べているうちに脂がだんだんもたれてきて「うぇっ」となってしまうのです。
レモンはこれを防いでくれます。しぼり汁をひと振りすれば、ギトギト感がたちまちどこかへ行ってしまいます。酢でも同じ効果が期待できるのですが、やはりレモンのほうが料理としては合うのです。
ほかにも鯖(さば)の南蛮漬けなども素材といい調理法といい、あぶらっこい料理を最後に酢で処理してさっぱりと食べる工夫をした料理だと言うことができますし、鮨(すし)のネタとして定番の「しめ鯖」なんかも仕込みの段階で酢に漬け込んでいます。
またさんまをお造り(刺し身)にするときも、おろした身を酢に一度くぐらせるという下処理をします。旬のさんまは、モノによってはかなりの脂をたくわえています
一歩間違うとあぶらっこくて気持ち悪くなりそうな食材をおいしく頂く工夫が、じつは日本料理には随処に施されていたんだなぁ…ということに気づかされます。
事情は日本以外でも同じです。
油を多用するイメージの強い中華料理でも、油の量に比例するようにお酢もよく用います。酢豚などは料理名にそのものずばり「酢」が入っていますし、コンビニのあんかけ焼きそばにも酢が付いてきます。
お店に行ってパリパリに焼けた餃子を食べるときにも酢を使います。ぎょうざの街として有名な宇都宮では餃子を食べるときにはしょう油など使わず酢だけで食べるという人もけっこういるとのこと。さらに餃子の本場ともいえる中国にいくと、(少なくともある地域では)餃子は酢だけを使って食べるのだそうです
このように中華ではこのような例を枚挙するのにいとまがありません。
あらためて振りかえってみますと、油(脂)に酢・レモンを合わせるという料理の工夫が洋の東西を問わずさまざまな文化で行われているようです。
これは逆にいえば東洋人だろうが西洋人だろうが、あぶらっこいものを食べるともたれるということの裏返しだともいえます
また逆に酢を用いた料理というのは、ちょっと気をつけてみてみると油を多用していたり脂っこい食材を用いていたりということにも気づくのですね。
若いころは気にならなくても年齢を重ねるごとに、こってりした食べ物を重く感じるようになった・・・という声も聞きます
このようなとき、じつは私たちの心強い味方になってくれるのがレモンや酢なのです
ラーメンに限らず、「どうもこの食い物をたべるともたれる(腹をこわす)・・・」というものでも、酢とかレモンをかけてみると全然平気で食べられた、というものもけっこうあります。
インスタントラーメンなど油っこい料理を食べるとき、この酢・レモンのことを思い出してみて下さい。きっと快適に食事することができるでしょう。そして食後ももたれず、お腹をこわしていた人も心配せずにいろいろなものが食べられるようになるはずです
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