皿洗いで逆にストレスを解消する方法~~食器洗いのメリット・その②

5月 19, 2018生き方

面白いのはビル・ゲイツと所ジョージ氏に共通するのは、彼らは決して皿洗いをイヤイヤやっているわけではないということだ

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皿洗いで自律神経が整う

小林弘幸氏は自律神経の専門家として、もはや日本ではもっとも有名になってしまった一人だろう

 

 

彼は皿洗いのやり方をこのようにやるようすすめている 

気持ちを込めて一枚一枚洗いましょう。そんな自分自身の存在や、シャボンや水の手触りも楽しみましょう。そして「きれいになっていくのは、気持ちいいなあ」と実感して下さい(自律神経が整えば休まなくても絶好調《ベスト新書》より(クリックすると楽天ブックスへジャンプします)

ちなみに小林氏はこの本の中で、ある実験の結果を紹介している
実験の目的は一言でいえば

マインドフルネスを皿洗いに応用したら、人間の感情にどんな影響があるか

を調べようとしたもの

2015年にこの実験を行ったのはアダム・w・ハンリー氏らフロリダ州立大学の研究グループ

もともと医師などではなくマインドフルネスの研究者らしい

 

これによると、やり方によっては皿洗いにストレスを軽減する効果がみられたというのだ 

【マインドフルネスとは?】
マインドフルネスはここ数年、グッと注目度を増しているようにみえる
これもいちおう一言で説明すれば、ようするに「瞑想(めいそう)」のことだ

高校球児が「平常心」を鍛えるために座禅(ざぜん)に取り組んだという話はよく聞くが、これも瞑想の一種と言える
「瞑想」と聞くとなにかお坊さんが修行のときにやるイメージや、宗教的な色合いも感じられるかもしれない

ここから宗教色をのぞいたものがマインドフルネスと呼ばれている

 

自律神経が整う皿洗いのやり方

 

ではどんな風に皿洗いをすればよいのか。

 

一言でいえば「今、ここに集中する」ということに尽きる

 

たとえば、ブツブツ言いながら皿を洗っている女性がいる

 

「このあと子供を風呂に入れなくちゃいけないし、あすは会社に早くいかなくちゃあいけないから忙しい、早く皿を洗ってしまわなきゃ」

 

もしくは子供に向かってこんなことを言いながらーー

「宿題やったの⁈ 寝る準備しなさい!ああ、今日は仕事で疲れたからお茶でも飲んで早くゆっくりしたいのにー・・・!」

 

よくある風景ではないだろうか。

 

これに対して、マインドフルネス的な皿洗いはちょっと違っている

 

つまり

「今」、「ここ」で皿を洗っている自分

皿や水の手ざわり

温度、洗剤の香りやシンクに立っているという感覚

皿を置く音

台所の明るさや暗さ

自分のしている呼吸、etc…

 

今感じているそれらのことに意識を集中させる、ということだ

 

また浮かんできた考え思考にも意識を向ける

自分が今、何を考えているのか、どんな考えが浮かんできたか、そのような自身のマインドの働きに対して自覚的であるということ、意識を向けることである

 

そうして(小林氏が言うように)今自分が皿洗いをしていることをゆっくりと味わうのである

 

そんなふうにして皿洗いをしたグループはそうでないグループに比べ、皿洗いをした後にはイライラした気持ちが落ち着いてくるという実験結果が出たのだ

*1

そして前述した小林氏がすすめている皿洗いの心得というのも、この研究をふまえたものだ

 

所さんに学ぶ、皿洗いを楽しくやる方法

しかし、これは考えてみれば当たり前の結果だ

 

「あれもしなきゃ、これもしなきゃ、早く休みたい、」

 

そういったことばかり考えてやる皿洗いが楽しいとも思えない

 

所さんの話を聞いてもやはりこのことがわかる

 

”食器を洗うのでも、タイムを計りながらやってみる。お皿10枚を今日は1分20秒で洗った。昨日より5秒も縮めた。明日はあと2秒縮めて記録を作ってやろう”

(「いいこと「が起こる人、「悪いこと」が続く人 2017年 10 月号 [雑誌]: PHP 増刊)*1

いろいろ考えているようでいて皿を洗うことに集中している

(所さんと皿洗いについて : 皿洗いで逆にストレスを解消する~食器洗いのメリット・その①

 

 

皿洗いとマインドフルネス

ところでこの研究結果が発表されたことによって"マインドフルネス的な皿洗い"というのが2015年ごろから注目を集めたわけだが実は論文を読んでみると、じつは元ネタとなっている本がある

40年ほど前に出版された禅宗の僧侶の本だ

 

彼の名はティク・ナット・ハン

日本でも多数の著作が翻訳・出版されている著名なお坊さんだ

マインドフルネスの立て役者とも言われる。

最近ではEテレの番組に出演したりしている(NHK『心の時代』)

 

そんなわけでマインドフルネスは古くて新しい。

 

アダム・w・ハンリー氏らによって”皿洗いがストレスを軽減する”という実験結果が出されたということは海外のニュースサイトでも何度も取り上げられ一時注目を浴びたようだが

マインドフルネスが注目を浴びていることの一端なのかもしれない

実験においてハンリー氏が参考にしたのはティク・ナット・ハン氏の著書”The Miracle of Mindfulness”(気づきの奇跡)だった。

 

この本の一節に皿洗いについて書かれた部分がある。参加者は実験においてこのマインドフルネスのやり方で皿を洗うよう促されていたのだ*2

 

このハン氏の著書、最初に出版されたのは1975年。

 

もうずいぶんな年月が経っている

 

ベトナム戦争を体験した彼は、マインドフルネスが世界に平和を広める手段だと信じ欧米でそれを実践した

 

著書”The Miracle of Mindfulness”は、彼がベトナム戦争のさなか、友人のために書いた「瞑想の手引き」書だった

 

この本はその後なんども邦訳され、そのほかにも数多くの彼の著書が日本にも紹介されている

 

それだけ現代的にも意味を持つ内容が書かれているということも言えるし、またマインドフルネスへの注目が高まってもいる

 

近ごろではGoogle社でマインドフルネスをテーマに講演を行い注目されている

 

しかし、本をただせば紹介されているのはブッダの瞑想法だ

基本的には仏教の経典に沿って瞑想のやり方が紹介されている

一般にもわかりやすい形で書かれた優れた指南書になっているために、こうして今なお大切にされていると見える(ちなみに私が行く図書館では今日もこの本の邦訳は貸し出し中になっていた)

 

ーーさてビル・ゲイツ氏が皿を洗うときに(おそらく今日も自分で洗ったかもしれない)マインドフルネスを意識してやっていたか、それとも別な考えでやったかは計りしれないが

 

ふしぎと様々な方面のひとかどの人物が皿洗いについてコメントしているということが面白い

 

所ジョージ氏はこうも言っている

 

”同じやるのなら楽しんだ方が勝ち。要は、楽しいものが最初から存在するわけではない。いかに楽しく工夫するか。いかに楽しさを引き出すか。それに尽きると思う。”(「いいこと「が起こる人、「悪いこと」が続く人 2017年 10 月号 [雑誌]: PHP 増刊

“楽しむ”ことの達人は、洗い物さえ楽しみに変えてしまうようだ。

最初の記事:「皿洗いで逆にストレスを解消する~~食器洗いのメリット・その①」へ

*1:ハンリー氏らの研究によると、「マインドフルネス的」な皿洗いには「いらだち」の感情を軽減する効果があるという結果が出た。ただしこの研究はたった51人の学生を対象にしたものにすぎない。研究としてはさらなる検証を必要とすることは言うまでもない。しかしすでにマインドフルネスがストレスに対して有効であることについては明らかにされつつある

*2:

While washing the dishes one should only be washing the dishes. This means that while washing the dishes one should be completely aware of the fact that one is washing the dishes. At first glance, that might seem a little silly. Why put so much stress on a simple thing?But that’s precisely the point. The fact that I am standing there and washing is a wondrous reality. I’m being completely myself, following my breath, conscious of my presence, and conscious of my thoughts and actions.There’s no way I can be tossed around mindlessly like a bottle slapped here and there on the waves.If while washing dishes, we think only of what we would rather do, hurrying to finish the dishes as if they were a nuisance, then we are not “washing the dishes to wash the dishes.” What’s more, we are not alive during the time we are washing the dishes. In fact we are completely incapable of realizing the miracle of life while standing at the sink. If we can’t wash the dishes,the chances are we won’t be able to drink our tea either.While drinking the cup of tea, we will only be thinking of other things, barely aware of the cup in our hands.Thus we are sucked away into the future—and we are incapable of actually living one minute of life

Washing Dishes to Wash the Dishes: Brief… (PDF Download Available). Available from: https://www.researchgate.net/publication/281608722_Washing_Dishes_to_Wash_the_Dishes_Brief_Instruction_in_an_Informal_Mindfulness_Practice?enrichId=rgreq-ac2462657178547f1338145a5e115fea-XXX&enrichSource=Y292ZXJQYWdlOzI4MTYwODcyMjtBUzoyNzI1Mjk5NTI2MDQxNjFAMTQ0MTk4NzYxMjQ0OQ%3D%3D&el=1_x_2&_esc=publicationCoverPdf [accessed May 19 2018].

 

生き方

Posted by metalLeopard