それはオレンジ色に輝くふたつのつぶだった【2】~金魚が意外にも生きのびてくれた方法~

子育て,祭りですくってきた金魚を飼う

小さいころに金魚を死なせてしまった経験があるという人は多いにちがいない
 
日本に住んでいたらたいていの人はお祭りなどで金魚すくいに挑戦したことが一度はあることだろう

小さい頃はお祭りがあると必ず挑んでは友達と競争したりしていた
おれは5匹すくった、おれはもっとすくったと自慢しあうが、その実は5回挑戦して5匹すくったのだったりする
小さい頃というのはそういうものかもしれない

 

しかしすくってきたのはいいが、はてどうしたものかとそこで頭を悩まされるのが大人である

子供はすくってきた金魚は洗面器のなかで永遠に生きられると信じている

バケツの中で生き続けるということに疑問をもたない

 

 

もちろん、自分もそう信じていた

 

ところで金魚掬い(すくい)に供される真っ赤な金魚は「和金(わきん)」と呼ばれ、金魚の種類の中でもかなり原始的な部類なのだという

これは意外だった

金魚の直接の祖先は鮒(フナ)である

「♬どじょっこだの ふなっこだの」

という、あれである

本を読むと「和金」の先祖は鮒であるから、田んぼや小川に泳いでいたころの

「野性が感じられる」

などと書かれてあり、餌(えさ)をあたえるたびにしげしげと眺めてはみる。

たしかにデメキンよりはフナに近いが、和金に「野性」を感じられるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。

 

そのことはともかく、そのフォルムと見た目の美しさというのは自分にもわかる

鮒(フナ)の子孫であるのになぜオレンジ色なのかはわからないけれど、とにかくあざやかなオレンジ色をしている

 

そしてお祭りの出店で上から眺めているときはわからないが、飼ってみるとお腹にうろこ模様があることが観察できる

ちょうど質感はサンマの腹に似ていて、ひし形の網目模様をしている

これはサンマをさばいたことがある人ならわかってくれると思う

 

さらにサンマがちょうど背側は青黒く、腹は光っているのに似てやはり和金も背側が紅く、それに対して腹がわは光っている

そうして和金の柔らかそうなお腹には淡い朱色のウロコがピカピカと輝いている

動くたびキラキラと光ってたえずせわしない

 

しかし水槽のそばを通ったときに二匹があまりおとなしいとどこか心配で、元気に泳いでいれば安心する

そんなふうに二匹の金魚とのくらしはすっかり生活の一部になってしまっていた

 

こうなると、もしこれが小説であったら事件でも起こった方がおもしろい

しかし実際はなにも起こらない

 

本を読んでみるとやはり金魚を飼育していくと病気とかいろいろと困難があるようだけれど、まだ飼って間もないこともあってか何事もなく彼らは生きのびている

それどころか順調に成長すらしている

 

ところでこうして何か月も金魚が生かしつづけるためにはやはりさまざまなポンプやらろ過装置やらを準備する必要があるのだろうと、はじめは意気込んでいた

 

しかしじっさいやってみると、そんなことはさらさらなかった

 

まず最初にそろえた道具といえば

  • 子供が100円ショップで買ってきた500円の虫かご(水槽にもできる)
  • (おなじく100円ショップで買ってきた)100円の金魚のエサ
  • 子供がじいちゃんちからもらってきたちっぽけな水草2本
以上である
 
そして何か月か経過した今もほぼ同じ装備で暮らしている
変わったことと言えば、子供が海で拾ってきた貝がらをインテリアとして底に置いたことぐらいで、単純な空気ポンプすら入れていない
 
それでも水が汚れないようにさえ気をつけていれば金魚は生きていけるらしい
 
「金魚というのは自分の体からすれば少し狭いと思うぐらいの空間さえあれば、あとは特別な機材がなくても生きていくことができる」
 
金魚の飼育法が書かれた本にはこんなふうに書いてあった
 
他の種類についてはしらないが少なくとも和金(すなわち金魚すくいでよく見かける金魚)を飼うのであれば、その飼い方を説明するのに1ページの紙幅も要さない
ただ数行でこと足りると思う
 
それは
  1. エサをやりすぎない
  2. 水が汚れないように気をつける
これだけだ
しかも1「エサをやりすぎない」というのは水を汚さないことが目的であるから、結局は「水が汚れないように気をつける」というただ一つのことに尽きると言っていい
 
しかし
 
「この水をきれいに保つ」
 
という単純なことが意外とむずかしい
 
 
 【3】へとつづく