宮城の方言で「ひどい」はひどくない、「うるかす」?「いきなり」?
以前、職場に宮城県出身の人がいました。彼女はよく宮城県地方の方言と思われる独特の言い回しをしていることがありましたが、なんら気づかず(共通語だと思い込んで)話していました
自分も同じ東北地方の出身でしたが、(ああ、これは宮城のほうでしか言わないんだなぁ…)というのがけっこうありましたので
「宮城の方ではそういうふうに言うんだね」と言うと、
「・・・えーっ?!○○○って全国共通じゃないの?!!!」
とよく仰天していました
同じ東北でこうもちがうか!ということがよくあります。山ひとつ越えるとちがうのがお国のことばなのでしょう。とても面白いと思います
宮城の言葉で「おもしろいなぁ・・・」と思うのをいくつかご紹介します
「うるかす」
おそらく東北地方では広く使われていると思います。「水分を吸わせる」という意味で、おそらく東北の人が人生で一番「うるかす」ものはなにか?と聞かれたら答えは「お米」でまちがいないでしょう。
「ごはんをうるかす」と言ったら米を吸水させるということです。
彼女のアパートで夕飯を一緒に食べようとなったときに
「お米をといで、うるかしておかないと」
という感じでつかっていたので、
「そういえば、『うるかす』って言うの東北だけかなぁ?関西の人とか言わないよね」というような感じで聞いてみたところ、彼女はまったく気づいてなかったようす。
「えーっ!!!東北以外は『うるかす』って言わないの⁈!!!!」
とたいへんな驚きよう。
これは私の母も同じことを言っていました。たぶん、東北地方はみんな同じだと思います
「ひどい」
このことばはとても「ひどい」ことばです。感覚をつかむまで一苦労です。宮城の人はこの「ひどい」をけっこう使います。
たとえば、職場でみんながよく使う道具の置き場所が変わって「ひどいよねぇ」とボヤいたりします。
“使いづらい、やりにくい、不便だ”
というような意味のようです
他県の人からすれば、(道具の置き場所が右から左に変わっただけなんだけど、なんでそれがそこまで「ヒドイ」こと…?)と謎に思います。
しかし本人たちは、ただ単に「取りづらくて不便だ」という意味でつかっています。これは少なくとも宮城県地方で特有の言い方です
私はその後、たまたま宮城に住むようになって10年ほど経ちますが、いまだに使いこなす自信がありません。まさに「ひどい」思いをしてきました。
いきなり/いぎなり
これについては職場などでしばしば耳にする言いまわしです
「いきなり(いぎなり)怒られた」といったら、ふつうは「(予期せず)急に怒られた」「急に相手が怒りはじめた」という意味になると思うのですが、宮城の人が言うと別の意味です
たとえばタクシー運転手のおばちゃんがいたとします。おばちゃんは上司の指示で予約のお客さんを迎えに行って、乗せたとします。
会社に帰って来るやいなや、「いや~、いぎなりおごらった~(怒られた)」と上司に言います。これはお客さんが急に怒りはじめたという意味ではありません。
お客さんが理不尽な人だったわけでも、さらさらありません。
宮城あたりでは(少なくとも私が住んでいる周辺では)
「いぎなり」は「ものすごく」という意味
になるのです。いろんな言い方の中でも最上級に、という意味になるかもしれません。
ですから、「いぎなりおごらった」の正しい意味は
「急に怒りはじめた」
ではなく
「ものすごく怒られた」
です。
ついでにこの場合、おばちゃんは「あんたのせいで」怒られたということを訴えたかったようです。この辺をとり違えるとどえらいことになります
仙台で『いぎなり』は『急に』じゃない!
宮城県に移り住んでもう長いことたちますが、言葉を習得するのってなかなかたいへんですね。
でも、とても面白いですよね。
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